2010/02/06 ■ iPadの流れで思い出す、過去の名作タブレット端末 Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

フォトレポート:タブレット型端末の歩み--「Newton」から最新スレートまで
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20407203,00.htm


このレポートを読んで思ったのですが、アップル系の商品に絡めてこういうふうに過去を振り返ると、アップル以外の先駆者が無視されがちな気がします。いや、まぁ、日本ローカルであまり売れなかった端末の話とかあんまり掘り出してもしかたないんですけど…。
しかしやはり「タッチパネル端末はそれすなわちアップルなり」という雰囲気をこのまま放置しておくのもなんかくやしい(笑)ので、せめて私が自分で買って実際に使ってたもの限定で過去の先進のタブレット(?)端末をいくつか紹介してみます。


  • SONY PalmTop PTC-300 (1991)


日本一周貧乏旅行をしている最中、四国の電気店で何を血迷ったか衝動買いしてますます貧乏になった思い出の品(おかげで最後の数日はほとんど食事もロクにとらなかったあげく自宅に帰りついた時には所持金が数十円しか残っていなかった)。
GUIが美しく超かっこよく、いじっているだけで幸せになれた端末です。当時流行っていたシャープの電子手帳などとは次元の違うGUI、住所録に手書きメモを書き添えることができたりなどとともかく先進的な端末でした。
欠点は、持ち歩くにはちょっと重く、そして遅いこと。重さはともかく速度の面は「あああ、これでもうちょっと速ければ…!」と当時本当に思いました。

私が購入したのはPTC-300でしたが、前バージョンPTC-500や姉妹機PTC-550は画面もでかくてお絵かきもかなり楽しめました。これは本当に隠れた名品だと今でも強く思っています。シリーズ初代機PTC-500の発売は、「世界初の個人用携帯情報端末(PDA)」ことApple Newton MessagePadの3年前です。(※Newtonの何が新しかったのか、という話は置いておきます)


  • J-Phone DP-211SW (1997)、DP-212(1998)

おそらく世界で初めて単体でインターネット(※メール)と接続された携帯電話、かつ、フル液晶タッチパネル携帯。初代DP-211SWはちょっと無骨でしたが、DP-212になってスリムでかなりカッコよくなりました。
まだi-mode以前の話なので「大画面液晶」というものに製品性がそれほど無かった時代、フル液晶タッチパネル操作は斬新でした。なかなか使いやすいと思ったのを覚えています。
当時、「SkyWalkerをおいしく使おう」と称して、ショートメッセージしか送れないこの端末(SkyWalkerサービス)宛に長いメールを自動分割して送りつけたり、メールしか使えないのに外出先から路線検索したくてWeb代理アクセスするメール-Webゲートウェイを書いたりなどといろいろ無茶をやっていました(メールで発着駅を送ると路線検索して結果をメール返信してくれるという便利なサーバ)。今思えば当時から「自分の使いたいものを作る」という姿勢だけは一貫していましたが。
この時代、メールも扱えるサーバ(=固定IPを持つサーバのroot権限)なんてのはなかなか個人では触れなかった頃なのですが、長らくお世話になってるプロバイダに無理にお願いしてマイマシンをホスティングで置いてもらっていたからこそできたサービスでした。適当にメールを分割してJ-Phoneのサーバに投げまくってたら、「RFCに準拠してください!」と怒られたのは…今となっては良い思いd…ごめんなさい!


  • 日本シティメディア メサージュ(1996)

この端末の出自は「双方向ポケベル」。独自の無線データ通信基地局網を持ち、そのネットワーク経由で相互に文字メッセージをやりとりすることができるフル液晶端末。ただし、文字情報だけでなく手書きの画像も送受信できたり、それらのメッセージがユーザ間で自由にやりとりできる掲示板機能のようなものがあったりなど、単なる通信機器という枠には収まらない優れたコミュニケーション機器でした。
音声を基本とする携帯電話(※当時まだ事業者間メールやi-modeなどの通信機能は全く世に存在しなかった)と違い、すべてが文字ベース・手書きベースでのコミュニケーションが前提となったサービス設計は、聴覚障害者の方に使いやすいということで非常に人気があったようです。
ただ、パケット単位の課金なので調子に乗って送りまくってると通信料金が…。遊びまくってたら痛い目にあったことを覚えています。


  • SII BrainPad TiPO (1997)

国産OS B-TRONを内蔵したPDA。実身・仮身モデルという、ハイパーリンクそのものの構造を駆使したファイルシステムと文書管理システムが非常に画期的でした。
実身・仮身モデルというのは、あえていえばファイル本体とシンボリックリンクというかそのようなものです。いろいろなファイルのリンクを、フォルダや文書などあらゆるところに貼り付けることができる、というのがその根本の思想。
そのため各種の関連データが相互に、網の目のようにお互いにリンクを張り合う、というような文書構造が簡単に構築できるのが特徴です。それまでに無い思想のOSと、そのOSを採用したPDA。ということで、非常に好き嫌いがはっきり出るものの一度ハマると「抜け出せない」端末でした。


以上、ほかにも「隠れた名作端末」は思い出せるだけでもいろいろとありますが、私が実際に買った上で「コレ!」と言えるものはこれくらいだと思います。
よく携帯電話で日本の端末の先進性を「ガラパゴス」と揶揄する論調が見受けられますが、正直日本のこういった端末の先進性は世界に誇れると本当に思っています。独自進化、いいじゃないですか、ねえ!

追伸:
そういえば、Amazon Kindleも「Kindleで書籍の全てが変わった」的に扱われることが多いですが、あれもそもそも出発点は日本で2004年に発売されたソニー電子書籍リーダー「LIBRIé」です。これも意外と知らない人いますよね。