2010/02/08 ■ 機動戦士ガンダム「戦場の絆」を迫力3割増にする方法(検討編) Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク


機動戦士ガンダム「戦場の絆」というアーケードゲームがあります。
これは2006年から稼働していて、視界を埋め尽くす大きなドーム型スクリーンの中心に座り、まさしくガンダムのコックピットで操作しているかのごとくの体験をすることができるゲームです。
視界を埋め尽くすドーム型スクリーン!想像するだけでその迫力に身震いしますが、実際にこのゲームをプレイして「あれ?思ったよりコックピットにいる気分にならないぞ?」と思った人もいるのではないでしょうか。

すこし話は飛びますが、「リアルさ」という意味では「写真」はリアルそのものです。が、人は写真を見ても実物と勘違いすることはありません。
テレビの映像も同じで、テレビの中の映像を実物と錯覚することはありません。これはなぜでしょうか。

人間が視覚の面で「実物」なのか「映像」なのかを区別するための手がかり、情報は実は多岐にわたっています。映像と外世界の境界線(テレビの枠)がはっきり知覚できればそれで映像だと思いますし、また右目と左目で同じ映像が見えていれば人はそれを実物ではなく平面だと思います。

で、「戦場の絆」のドーム型スクリーンは、こういったもろもろの「人間が『これは映像だ!』と判断するための要素」のうち、「映像と外世界の境界線」(テレビの枠)を見えなくしてしまおう!前方を映像で埋め尽くしてしまおう!そうすれば実物と錯覚しやすくなるよね!…というものなのです。

ところが、このシステムでもごまかせない「人の目の仕組み」があります。先述した「右目と左目で同じ映像が見える」(=視差が無い)というのもそうなのですが、もうひとつ、普段はあまり意識していない問題点が残されています。


それは「距離」。スクリーンに写っている画像は、はるか遠くの背景。でも、それを見ている目はほんのちょっと先に焦点をあわせている。このズレが「これは実物ではなく画像なのだ」という認識を脳にもたらします。
遠くの景色を見ている時、眼も遠くを見るように(眼球の)筋肉を動かしていれば、脳はそれを「遠くを見ようとしていて、遠くの映像が見えている」と違和感なく受け入れるはず。この理屈は過去にゲームに活かされたこともあり、そして実際にかなり効果をあげていました。

スターブレード - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89


「スターブレード」では、ブラウン管による映像を、いったん凹レンズを通すことで遠方にあるように見せかけ、宇宙空間を見ているような気分にさせる「無限遠投影システム」と呼ばれるシステムが使われていました。

人間が「無限遠(はるか遠く)を見ている」と錯覚するのに必要な距離はどれくらいなのか。一説には1.2~1.5mは必要だと言われています(個人的な感覚では3mくらいは欲しいところですが)。ところが、「戦場の絆」の筐体(p.o.d)は…実際に乗り込んで実測してみましたが、視点からスクリーンまでは80~90cmほどしかありません。これでは脳が「風景を見ている」と勘違いしてくれなさそうです。あのドーム型スクリーンに乗り込んでも、なんかいまいちヴァーチャルリアリティな感じがしないぞ?という人は、たぶんその要素を強く感じてしまうんだと思います。

この「戦場の絆」のドーム型スクリーンで、「スターブレード」のような無限遠投影システムが使えたら、もっと臨場感が増すのではないだろうか?
でも、スクリーン側に一面レンズを装着するのは現実的ではありません。

スクリーン側にレンズがつけられないのなら、人の眼にレンズをつけてしまえばいいのです。



というわけで、さっそく100円ショップで一番弱い老眼鏡を買ってまいりました。
老眼鏡は、「遠くを見る感覚で近くを見るための眼鏡」です。これで焦点がスクリーンに合えば、「遠方を見ている気分で」スクリーンの画像を見ることができるようになるはず。そして、それはすなわち「脳がより錯覚しやすくなる」つまり臨場感が上がるはず

結果は…
  • たしかに遠くを見ているような感覚で画像を見ることができる実感がある

  • 画像が遠くにあるので、「景色を見ている感」が増している

  • だが、度が強すぎてピントをスクリーンに合わせ切れず非常に眼が疲れ酔ってしまう


という結果となりました。

もともと老眼鏡は「近くを見るため」の眼鏡で、レンズの瞳孔間距離が近くを見るために狭く設定されていたりすることもあるらしいのと、度が強すぎたのがあるかもしれません。
今回は+1.0の老眼鏡での実験でしたが、+0.5か+0.25あたりの遠視用眼鏡で試してみたいところです。