2010/02/25 ■ 今だから褒めるシグマブックの話 Twitterでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク


世の中はKindleだSony ReaderだiPadだと大騒ぎ。そして日本経済新聞が電子版を発行するなど電子出版の世界は大きく動き始めていますが、日本でも過去電子書籍用の端末はいろいろと発売されていました。

Kindle」(2007年)に先駆け、日本でも電子ペーパー(E-Ink)を利用した電子書籍端末「LIBRIe」(2004年)が売られていたこと、そしてそれが成功しなかったことについてはよく語られています。が、2004年当時、その「LIBRIe」にライバルがいたことはどうも忘れられがちのようです。本日は、そのライバルのお話。


それは、パナソニックが発売した「シグマブック」(2003年)。東芝へもOEM供給されており、東芝ブランドのシグマブックもありました。写真はその東芝のもの。
LIBRIeが電子ペーパー E-Inkを採用している中、シグマブックはコレスティック液晶という特殊な液晶パネルを使用していました。原理こそE-Inkとは全く異なりますが、やはり「画像の保持に電源が要らない」ことは共通しています。なので、電池が必要なのは「ページをめくる」時だけ。公称で電池(単三電池2本使用)の持ちは「数カ月」。シグマブックに対応した電子書籍のオンライン販売もされ、コンテンツが取り揃えられていました。

モチロン、これも成功しなかった端末であるからして当然欠点がいろいろあります。というか、率直に言ってかなりダメダメな端末でした。が、LIBRIeだけでなく今の時代に「成功した」電子書籍端末…Sony ReaderやKindleなどでもまだ実現できていない、シグマブック端末ならではの良いところもあったのです。


・見開きである
なんとディスプレイ2面を使った見開き表示。とくにマンガを読むのにはこれは強い。そして、「電源OFF」や「スクリーンセーバー」という概念も無かったため、ともかく常に最後に読んでいたページを表示しっぱなしでした。つまり、「書籍を開くとコンテンツの続きが読める」という書籍の体験そのものを再現できているという面でもこれはよく出来ていたと思います。

・コンテンツを表示しっぱなし
そう、この「コンテンツを表示しっぱなし」という設計も個人的には好きなポイント。表示面が常にむき出しのKindleで同じことをするのは賛否あるでしょうが、スイッチによるモードの切り替え、というアクション無しでコンテンツに戻れるのはデジタルな印象を軽減させるのに成功していたと思います。


・解像度が高い
この端末に採用されているコレスティック液晶は、非常にコントラストが低く温度変化にも弱いなどなかなかキビシイものではありましたが、解像度は問題ありませんでした。なんと1スクリーン768×1024、2面で1536×1024です。Kindle(DXでないもの)が600×800ですからピクセル数で3倍以上の差があります。

・フラッシュしない
そして個人的に最も良いと思っているのがこれ。
E-Inkを使用したデバイスでは、単純な書き換えでは以前の表示の残像が残ってしまうため、残像を消すために白黒反転フラッシュを挟む必要があります。どうも「本を読む」という連続した流れのなかで、思考を途切れさせる印象があってこれが苦手なのです。
LIBRIeでは残像が残るのを覚悟でフラッシュしないページ切り替えにすることもできましたが(Kindleでもあるのかな?)それでも残像がある程度たまってきたところでやはりフラッシュ消去する必要がありました。このシグマブック端末に採用されている液晶は、(遅いものの)ジワっと書き換えられる動作で、そのような「思考を途切れさせられる感」がありません。


対応の電子書籍販売もずいぶん前に終了してしまい、いまや中古の流通ですらもほとんど見かけなくなってしまったシグマブック端末。いま使おうと思うと当然対応コンテンツは全部自作する必要があるのですが、そのめんどくささはまたそのうちまとめたいと思います。いや、ほんとメンドクサイんですよねえ…。

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