2010/03/11 ■ ソニー「3Dブラビア」発表と3Dテレビに対する拒絶反応 Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

ソニーがついに「3Dブラビア」を発表しました。発売は6月となるようですが、既に発売前試作品が銀座のソニービルで体験できる、というのでさっそく銀座へ行ってみることに。

「3Dテレビ」というものに否定的なみかたをしている人はとても多いと思います。が、それを差し引いても最新の3Dテレビは見ておくべきです。今回の「3Dブラビア」もすごい出来でした。

そもそも3Dテレビの仕組みとは…という話はまるっとすっ飛ばしますが、ブラビアの3Dは液晶シャッター眼鏡方式。となると昔からこの手のを体験したことのある人には「専用眼鏡が重そう」とか「チラチラとちらつきそう」とか「暗くなりそう」とかいろいろとネガティブなイメージがあると思いますが、いまの3Dテレビは全然そんなことはありません。

昔の液晶シャッター式3Dは、60Hz(1秒間に60回の描画)表示を右/左に振り分けていたので知覚できてしまう「ちらつき」が生じていましたが、今回の液晶シャッターは画面の切り替えそのものは240Hz、そして液晶シャッターの切り替えは120Hz。左右の表示をあわせても元のテレビ放送と同じ描画回数を確保しています。実際に画面を見ても「ちらついている」という印象は全くありません。画面の明るさも充分で、非常に綺麗。
もちろんフルHDならではの解像感も完全で、そして「3D」に昔からつきものだった…そして、今でも「アバター」をはじめとした映画館での3D視聴でつきまとってしまう「クロストーク」、すなわち右目に左目用の映像がうっすら見えてしまうような残像現象もほとんど抑えられています。「クロストークは無いのかな?」とあら探しのように探してみたら、コントラストの非常にはっきりした輪郭線のところにようやくかすかに発見できた…というくらい。あと、専用3D眼鏡は、ふつうの眼鏡との重ねがけも可能でした。

デモンストレーションとして流されている映像はどれも3Dコンテンツとして完成度が素晴らしかったのですが、中でもゲームは本気で凄かった!ワイプアウトHD、モーターストーム、スターストライクHDなどの映像が流されていましたがどれも「うおおおおっ!」と奇声をあげたくなる(全力で我慢しましたが)迫力でした。上の写真は液晶シャッター眼鏡ごしに「スターストライクHD」の画面をFinePix REAL 3D W1で撮った写真です(平行法)。これでその実力の一端がすこしはおわかりいただけるでしょうか…?
はっきり言って、そこらの3D対応映画館よりもずっと綺麗に見えます。映画館は映画館でどうしても方式上の限界というものがあるのですが、家庭用テレビはそれを越えられています。


さて、「3Dブラビアはすごかったよ!」という話はこのあたりにしておいて。
いよいよ3Dテレビが発表・発売される段になってきますと、「3Dテレビ」というものに非常に否定的なコメントもよく聞こえてくるようになります。いや、まぁ、すごく気持ちはわかるんですが。

でも、私は、そういった否定的なコメントのうち、いくつかは単なる誤解だと思うのです。たとえば…

「え?リビングで家族でみんな専用眼鏡つけるっての?ありえない!」
食事中に3D眼鏡つけるってか?ナンセンスだね!とか、料理中に3D眼鏡なんてつけてられないよ!とか、そういう話はよく聞きます。でも、「3Dテレビ」は「3Dにも対応したテレビ」であって「すべての放送を専用眼鏡を装着して視聴しなければいけないテレビ」ではないと思うのです。特に、ほぼすべての放送は2Dのままです。普通に「家族の団らん」で視聴する際は、3D眼鏡は要らないのです。
少なくともしばらくの間、供給される3Dコンテンツは「大作3D映画」「ゲーム」そして場合によっては「ワールドカップ」。こんなもんです。いわばプレミアムなコンテンツばかり。つまりどちらかというと「これからみんなで映画見るよ!」→スナック用意してー、ジュース用意してー、部屋ちょっと暗くしてー、さあ3D映画見ようか!…というシチュエーションで主に使われるものだと思います。こういう「特別な時間」に3D眼鏡をつけよう、というのは私はそれほど変なことだとは思いません。


「たったそれだけのために何十万も出せるわけないじゃん。馬鹿じゃないの?」
そりゃそうです。実際「3D対応だから」という理由で価格をあげることは難しいとメーカーでも思っているようです。「3D対応」というのは、あくまでも「買う時に選んでもらいやすくするための付加価値」であって、「3D対応のテレビが欲しい、という需要で買い換えてもらう」ことまでは狙ってはいないでしょう。今回ソニーが発表したラインナップを見ても、「3D対応」モデルの中にも眼鏡が付属していないものがあります。眼鏡(や眼鏡用のトランスミッター)がついてないのであればテレビを「3D対応」にする製造コストの増加なんてほとんど無いに等しいんです。つまり、それは「今後のテレビはほとんど3D対応になっていく(ただし眼鏡は別売)」ということでもあります。
そう、「3Dのために何十万も出してもらう」ことなんてメーカーは最初っから期待していないんです。「そのうち、いつか買ってもらうテレビも3D対応にしておこう」「そうすれば、いざ『3Dも体験してみたい』な、と思った時には1万円くらいの眼鏡を買ってもらうだけでいい」ということかなと。今はまだ出はじめなので注目機能になっちゃってますけどね。

「3Dのコンテンツなんて無いじゃん」
ゲームすごいよ!びっくりしたよ!
あと、最近はハリウッドが本気で作品の3D化を進めているので、しばらく映画には困らなそうです。放送は…3Dにする必要も無いし、ならないんじゃないでしょうか。

「液晶シャッターでちらちらと点滅するなんて目に悪そう!」
ブラウン管や蛍光灯のほうが実は激しく点滅しています。


なんかひたすら3Dテレビを擁護しまくっていますが、これは「3Dテレビ買え!」と言っているわけでは決して無いです。「3D」に否定的なイメージを持っている人の中には、過去の(ひどい)3Dのイメージを強く引きずっていたり「家電メーカーがまた無駄な機能を追加して価格をつりあげようとしている」と思っていたりしている人も多いのかなあと思います。そういうイメージで、なんかすごい最近の3Dを見もしないで嘲笑して終わらせるのはちょっともったいない!せめて見てみようよ!すごいから!…ということをちょっと言いたかったんですね。
あと、裸眼立体視(眼鏡なし)のテレビや、偏光式(100円くらいのサングラス風の眼鏡かけるやつ)の3Dテレビはこの「すごさ」がはっきりいって全然わからないので、見るならパナソニックかソニーの最新の奴を全力でおすすめします。

家電メーカーやハリウッドが3Dだ3Dだ言ってるのはそれなりに理由があります。3Dブームは定期的にやってきてはそのうちしぼんでいくのが常ではありますが、今回のブームはほんと見られる3Dの質がすごい。すごいのが見られるんだから、見ておかなきゃ損じゃないすか、ね!


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