壊してしまうと読めなくなってしまう部分(誤り訂正の効かない部分)に留意して作ればたしかにこれで充分な実用性のある「デザインQRコード」を作り出すことができるのですが、読み込みミスのためのシステム上の余力を削って(余力に頼って)“デザイン”しているわけで、ギークとしてはなんだかちょっとした居心地の悪さを感じなくもありません。
ところが、世の中にはそういう手法ではなく、「真に」デザインされたQRコード…つまり、QRコードを生成する際のデータをいろいろといじってコードパターンそのものをデザインしてしまうことを考える人もいます。特許の海をたゆたって、そんな実例を探してみることにしましょう。
いきなりびっくりするようなQRコードですが、ちゃんと読めます。特許公開2008-052588「プログラム、情報記憶媒体、2次元コード生成システム、2次元コード」からで、出願人は株式会社バンダイナムコゲームス。実はほかにもバンダイナムコさんはデザインQRコードについての特許をいくつも出願しています。
特許公開2007-241327(バンダイナムコゲームス)。これが基本パターンで、通常データの量で決まるQRコードの大きさ(「型番」といいます)を実際のデータ量よりも大きく取っておき、データの無い余白エリア部分が空白ないしデザイン形状になるよう埋草データを操作する…という手法のようです。
特許公開2008-152334(バンダイナムコゲームス)。エリアをデザインできるということは当然空白にも出来るので、そこに黒と認識されない淡いパターンを埋め込めば「正しい」QRコードのままいろいろ意匠をいじれる、というわけですね。
似たような内容の特許は他からも出願されています。この画像は特許公開2009-163720(産業技術総合研究所)から。産総研ってこんなこともやってるんですねー。…と思ったら、これは作成ソフトがフリーで公開されているじゃないですか!わーい!さすが我らの産総研!そこにシビレるあこがれるぅ!
かわいいQRコード、目立つQRコード作成するフリーソフト「QR-JAM」 by Manabu HAGIWARA
http://staff.aist.go.jp/hagiwara.hagiwara/qrjam/
…というわけで、このエントリ冒頭のQRコードはこの「QR-JAM MAKER」で作成しました。さまざまな種類のプリセットパターンからイラストを選べるので簡単に意外性のあるQRコードを作れます。誤り訂正の「余力を削って」作る手法ではなく「イラスト込みで正しいQRコードになっている」ので、読み取り精度も高いのがいいですね。
特許公開2008-107275(株式会社アキバソフト)は、埋草データ(入れ物であるQRコードに実データを入れたあまり部分)ではなく実データそのものをいじってデザインパターンを出すというのがおもしろい。なのでこのサンプルのコードも読めるのですが、妙なゴミデータ(=QRコード化する時に絵になるデータ)もくっついて同時に読み出されます(笑)。しかしなんでサンプルがc.2ch.net…。(※上の顔画像つきQRコードを読んでみましょう)
というわけで、デザインQRコードならぬ「デザインされたQRコード」の例でした。ほかにもQRコードのピクセルパターンを変形してコード全体の意匠を独特のものに変える(特許公開2010-26665など)とか、けっこういろいろ考えられているみたいです。先ほど紹介した「QR-JAM MAKER」もあわせて、一見単調なQRコードの世界もじつはけっこう工夫のしがいがあるんだなあ、なんて思いながら
と、〆とします。
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