2010/03/26 ■ ニコニコ生放送×Twitterの連動強化はダダ漏れの夢を見るか? Twitterでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク


3月25日の定期メンテナンスをきっかけに、インターネット・ライブストリーミングサービス「ニコニコ生放送」のTwitter連動機能が強化されました。このblogでも過去「Ustream、ニコニコ生放送、どっち?」「続・Ustream、ニコニコ生放送、どっち?」などとライブストリーミングサービスについて書いたりしてきましたが、今回の変更はこれらの分析を過去のものとするかなり大きな修正に化ける予感がします。いよいよニコニコ動画(ニコニコ生放送)側も本気出してきた!という感じです。

いままでの分析をざっくりまとめると「ニコニコ生放送はコミュニケーション重視だが閉じたコミュニティの中で完結している」いっぽう「Ustreamは放送重視で比較的コミュニケーションに弱いがTwitterのソーシャルネットワークを放送導線とすることでコミュニティが拡大している」という感じ。異論はあるとは思いますがあくまでもおおまかな傾向として。


インターネットのストリーミング放送に比べていわゆる「テレビ」、地上波放送が(たとえ落ち目と言われていようが)ケタ違いの数の視聴者を獲得できるのは、電波によるブロードキャスト…という技術的な面もさることながら「チャンネルの数が圧倒的に少ないから」というのが主な理由です。東京ですらキー局は7局、東京MX(東京の地方局)を入れても8局しかありません。「とりあえずテレビでも見るか」という人は、8局の中のどれかを選択しなければならないのです。この「選択肢の少なさ」は、つまり特別に宣伝しなくてもまぁだいたい誰かは見てくれるということを意味します。

いっぽう、インターネットのストリーミング放送は「誰でも簡単な機材で始められる」という参入障壁の低さが特徴ですが、だからこそ、番組の数がハンパありません。ニコニコ生放送だけでピーク時には同時に2200番組が放送しているのです。つまりこれは、なんらかの形で番組の存在を知ってもらえないと、そもそも誰も見てくれない、ということです。

この「視聴者の獲得までの流れ」については、その番組が面白いかどうか、という評価は全く関係ありません。いくら面白い番組をやっていたとしても、その番組を知ってもらえないことには面白いかどうかすら評価してもらえない。つまり誰も見てくれないのです。そう、「どうやって番組の存在に気づいてもらえるか」がインターネット・ストリーミング放送の番組運営の鍵になるのです。放送の画質や音質などテクノロジーの面よりもおそらく「どういう集客手段があるか」のほうがはるかにサービス自体にとって重要になります。


いままで、Ustreamとニコニコ生放送ではこの「番組の宣伝手段」(外部導線)が全く異なっていました。Ustreamは「(ソーシャルストリームで)コメントした内容がそのまま自分のTwitterに流れていくので、自分をフォローしている相手に自動的にその番組の存在を知らせる」仕掛けになっています。これが「放送主」だけじゃなく「コメントしている人」に適用されるのがポイントで、面白い番組であれば自動的にクチコミ効果が発生するようになっていたわけです。
いっぽう、ニコニコ生放送では「ニコニコ動画」というコミュニティの中にいる間は様々な手段で(本当にいろいろな方法で)あらゆる番組の宣伝が行われます。「ニコ生クルーズ」という、ランダムにユーザ番組を一定時間ごとに渡り歩くオフィシャル提供生放送番組まであるのです。が、その「宣伝」は一時的なものにすぎず、その瞬間に面白いと思った人を視聴者として獲得することができたとしても、その先…視聴者が次の視聴者を呼び込むような連続性…が無い。またはなかなか「ニコニコ動画」の外へ広がっていかないことが弱点でした。


今回ニコニコ生放送が採用した「Twitter連携」は、そんな中で「ニコニコ生放送にUstreamとほぼ同等のTwitter機能を搭載する」というものです。つまり、この機能が使われていけばニコニコ生放送にもUstreamと同等のクチコミ効果が発揮されていく可能性があるのです。強力な「ニコニコ」内部の導線に、外部へ広がっていくクチコミ導線が追加される。これはすこし想像するだけで、いかにも“強そう”です。

もちろん、Twitterをこのような形で取り込んだことに対して発生する問題もあります。たとえばコメントが分散してしまう、高速なタイムラインは追い切れない…など。しかし、そこはあくまでも「メインはニコ生のコメント、Twitterはサブ」と見せることで補完の関係を築くように配慮しているように見えます。

ただ、特に外部導線という意味では視聴者にも積極的にTwitter連動機能を使ってもらわないとソーシャルネットワークによるクチコミ効果が期待できません。そして、現状の実装ではそのあたり微妙にまだ踏ん切りがついてないところがあるのかな?という印象も受けます。「放送」と「コメント」という二者の関係だけでいえば相変わらずニコ生のコメントシステムに分があります(特にコメント流速が速くなった時は!)ので、ユーザにTwitterを中心に使ってもらうというわけにもいかないでしょうからそれも致し方無しではあるのですが。

ともかく、そんなわけで今回のTwitter連動機能、「いよいよニコ生がUstreamに対する弱点(=コミュニティの外部への拡がりが弱い)を潰しにかかってきた」と私は見ます。あとは「ニコニコ動画のアカウントでログインしていないと生放送の視聴ができない」というのがコミュニティの外部拡大の障害になっているのですが、さすがにここはまだ当面変わらないかな?



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