2010/03/23 ■ 日産“本気”の電気自動車『リーフ』の一端を体験した! Twitterでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

日産が2010年度中に一般へ発売すると宣言している電気自動車『リーフ』に向けて、日産の電気自動車プラットフォームに試乗させていただく機会がありました。
電気自動車といえば、以前三菱『i-MiEV』にも試乗させていただいていますし、4月からの『i-MiEV』一般販売開始待ち行列にも一応並んでいたりもします。そんなわけで今回も実にワクワクしながら行ったわけですが…いやあ、日産、本気ですね!というのが率直な感想。

今回の試乗会、案内を見て「うわあ乗ってみたいなあ」と思いつつ応募してみたら見事に“当選”。参加確認の電話や、その後のメールなどで何度も何度も「非常にたくさんの応募の中からほんと特別に当たったんだから絶対にブッチすんなよ!(意訳)」と繰り返し強調されたのですが、そんなに倍率高かったんでしょうか。いや、念を押されなくともこんな貴重なチャンス、キャンセルする気なんて全くありませんでしたけど!(笑)

事前に確認してみたところ、残念ながら「施設内は撮影禁止、カメラ持ち込み禁止です。カメラつき携帯電話もお預かりする…まではしませんが撮影はしないでください」と言われてしまったので施設内の写真はありません。ちなみに「blogに書きたいので撮影したいんですけど(※本当は生放送したかったのでその許可取りの前フリだった)」と問い合わせたら前述の回答だったので、「撮影禁止だけど他言禁止ではない」と解釈してこうやって書いていたりするわけですが…いいんですよね?

さて、そんなわけで行ってきました日産自動車追浜試験場GRANDRIVE。日産自動車の開発に使われているテストコースで、さまざまな道路条件を備えた一周3.8kmほどの周回路です。今回は、このコースを1800ccクラスのガソリン車で1周、次に続けて日産の電気自動車プラットフォームで1周自分で運転し、ガソリン車と電気自動車のフィーリングの違いを体験する…というメニューが用意されておりました。
で、それだけかなと思っていたのですがサプラーイズ!最終調整中というか、まだあちこち部品が「仮」の状態の…最新版の「リーフ」実車もじっくりたっぷり触って眺めさせてもらえるわ実際の開発担当者の方と意見交換する機会はあるわでちょう盛りだくさん!テンションダダ上がりの会でした!うひょう!



あくまでも試作車であって、リーフではない…と言われていましたが、実際に運転したのはこちらの車両。時々電気自動車関係の記事で見かける機会のあった「日産EV-11プロトタイプ」(見た目はティーダ)ですね。正直にぶっちゃけると「やっぱりリーフじゃないのか…」と一瞬思ったのは事実ではありますが、よくよく考えてみると(考えなくても)こんな試作車丸出しの車両を一般人の私が運転するチャンスなんてそれこそ通常はマジ皆無なので、そう思い直した次の瞬間からやっぱりテンションダダ上がり。

そして「実車の」リーフとこの車両とを比べてみても、「ほぼリーフ相当」のものでありました。ボディこそティーダなのですが、プラットフォームは同じだという話でしたしコンパネこそ違ったもののシフトレバーやサイドブレーキなど(これがまたカッコいいんだ!)の操作系は実車リーフ同等のシステムがついてました。

…というわけで、「運転したのはリーフのプラットフォームを使った試作車でリーフではない」「開発途中の試作車なので最終的なフィーリングは異なる可能性がある(実際に回生ブレーキの設定は既に違うという話でした)」「日産リーフそのものもまだ完全に量産バージョンが完成したわけではなく変更の可能性がある」…という前提で、「日産の電気自動車プラットフォームに試乗」して「リーフをじっくりたっぷり眺めてきた」感想を書いてみたいと思います。
  • リーフは、「ファーストカー」電気自動車だ
    三菱のi-MiEVは「軽自動車iの上に電気自動車のシステムを載せた」という作りになっているため、乗り心地はなんか妙にしっとりとなめらかで高級感があるくせにボディはやっぱり軽自動車(でも値段は400万円)というちょっとチグハグなところがありました。そのため(i-MiEVは)乗車定員が4人だったりと車格的にもちょっと「1台目の車」とするにはつらいところがあったのですが、リーフは本気で(電気自動車で)ファーストカーに耐える車を作ってきた、という驚きを感じました。もちろん高級車!とまではいきませんが、ボディサイズ、ドアを閉めた時の重量感、内装、ラゲッジスペースなどなど、「すごく普通に使える車」として仕上がっています。ファーストカーとして使うことを想定した構成の電気自動車、というのは実のところ史上初なのではないでしょうか。(テスラ・ロードスターもファーストカーにはならないでしょうし)
  • 乗り心地はドッシリとした安定感重視か
    「電気自動車=ゴルフ場のカート」なんてステロタイプなイメージはもうさすがに古臭い。今は「電気自動車ならではの加速感」という表現を使ったほうがいいのかなと思いますが、その源泉は電気モーターのトルク特性。モーターはガソリンエンジンと違い、低回転がもっとも高トルクを発生するので発進加速のトルク感が全く違うのです。そこを素直に丸出しにしたのがi-MiEVで、その軽自動車然とした車格もあいまって「え!?何この加速!?」というドッカンターボ的サプライズがありました。が、今回の日産EV試作車はもうちょっとマイルドな感触。とはいえ別に加速がワルイとか鈍いとかいうことでは全く無く、スルスルとどこまでもなめらかに加速していき気がつくとアレ?というくらい速度が出ている、という“継ぎ目のない加速感”。速度計を見ないと何km/h出てるのか本気でわからないのは「変速という概念が無いためシフトショック皆無」「するするとまるで“頑張ってる感”ナシでほぼ無音で加速し続ける電気モーター」「外装の防音もわりとしっかりしており、うるさすぎないロードノイズ」あたりが理由なのかなと思います。特に前2項は同じコースでガソリンエンジン車と比較した場合もんのすごく顕著に差が出ていました。ガソリン車で思いっきり踏むとキックダウン→エンジン唸りを上げてがんばる!…の流れがすごくはっきりあるのですが、そんな雰囲気をまったく感じさせず加速するのです。あと、「ドッシリとした」というのはi-MiEVにも共通した「床下に重量物(バッテリー)があることによる低重心化」。試乗会当日はものすごい風だったのですが、横風などものともしない安定した走りは実にイイカンジに快適でした。
  • 日産はマジで、本気で電気自動車をたくさん売るつもりらしい
    それでも電気自動車としては異例の“量産車”である三菱i-MiEVの数字で、2009年度の生産数が2000台・2010年度8500台の予定です。そんな中、日産は「リーフ」を年間25万台生産する計画を立てているそうです。25万台!
    そして、同一プラットフォーム(車台)を使ったラインナップの拡充で「電気自動車」の生産そのものはそれ以上を狙っているらしく、ベースとなる電池の生産能力は年間47万5千台とか。もはや途方もない数字ですが、「リーフ」の実車を見るとその数字も納得できるのです。そう、「リーフ」はちゃんとマスを狙える車として作られている。「電気自動車だから」という「言い訳」の無い、きちんと「使える」車。突飛なところやニッチに逃げない、なるべく多くの人を満足させようという設計。この時期に、電気自動車で、ですよ!?何考えてんだ凄いですよねえ。

三菱がi-MiEVを開発していることは結構以前からいろいろと露出されてきていたので、三菱がi-MiEVの本格量販を発表したことは特に意外性はありませんでした。が、その前後でカルロス・ゴーン氏が「日産は電気自動車を本格量販する!」と言い出したのは実は個人的にかなり意外で、正直なところ私は「三菱と張り合って空手形打ってんのか?」としか思っていませんでした…。
しかし、実際に日産EVプラットフォームや「リーフ」実車に触れてみるとその印象は一変。これは昨日今日から開発していたのでは作れません。25万台!の生産ラインも当然準備にものすごく時間がかかったでしょう。単に外から見えていなかっただけで、日産は本当に、本気で、電気自動車を造っていたのです。それを確信できたのが、今回の試乗会での個人的な最大の収穫でした。

日産のこの博打(…だと思うんですよねえ、やっぱり…)がどう転がるかはまだわかりませんが、しかしいつか誰かがやらなければ先へと進まない“決心”だと思います。その意味でも、どちらにしても「日産リーフ」は自動車の歴史に残るクルマになるでしょう。なにやら「桜の咲くころには」いろいろとリーフ関連の発表があるようなので、詳しいことはもうちょっとの間楽しみに待ってみることにいたしましょう!


Related Posts with Thumbnails