2016/11/07 ■ World in a jar - ジャム瓶の中の世界 - THETA写真を机の上に Twitterでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

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RICOH THETA × IoT デベロッパーズコンテストに、ひっそりと「World in a jar - ジャム瓶の中の世界」という作品を応募しまして、ありがたいことに「審査員特別賞」をいただきました2年連続の受賞!となります。今回は昨年と違いコンテスト名に「IoT」が入り、審査基準も「IoT時代にふさわしいイノベーティブなもの」。IoTどころか今回まったくデジタルなデバイスが含まれない完全アナログなガジェットを応募してしまったのであんまり期待していなかったのですが、評価いただけたようでたいへんありがたいことでございます、、、

というわけで、この応募作品「World in a jar」を紹介したいとおもいます。

<かんたんなまとめ>

・「World in a jar」は、スライドフィルムに360度写真を焼き込んで、ジャム瓶などに投影するアナログな球面プロジェクター装置です
「物理的にパノラマ写真を保存したい」「お気に入りの写真は机に飾りたい」「でも写真がかさばったりするのは嫌だ」という問題を解決しようとしています
・プロジェクター部は秋月電子のドーム型スクリーン用カラー液晶プロジェクタを使用。かんたんな工作でこれをスライドプロジェクター化しています
秋月ドームプロジェクターを使って遊んでいるみなさんがお困りの「よい球体スクリーンがない」という問題についてもひとつの回答も。素敵なぴったりのスクリーンを発見しました!

World in a jar - ジャム瓶の中の世界

 「World in a jar」の紹介動画はこちらです。「どういう作品か」というのはだいたいこの動画で説明しているのですが…、根本的な問題意識として「その写真(全天球写真)データ、30年後も再生できるの?」というものがあります

私はTHETAのようなカメラは特に「家族写真にいい」と思っています。以前のblog記事に書いた内容を再掲しますと…

家族のスナップで本当に残しておく価値があるのは背景がボケてキレイでカワイく映された子供自身…ではなく、その子供をとりまく周囲の景色だったり、周囲の人も含めた関係性だったりするのではないでしょうか。子供が将来大きくなった時、振り返りたいのは自分の顔ではなく、自分がどういう環境で育ってきたかだと思います。

そんなとき、THETAで残した写真は、本当にその場の空間すべてを切り取ります。散らかった我が家だったり、そのとき歩いた周囲の景色だったり、そしてその写真を撮っている親の姿だったり。どの部分を切り取るか、を「選択」しなければいけない、従来の「写真」では残らない、そんな「余分な」情報までも全球撮影では後に残すことができる。そして、そういった「散らかった我が家」のような、「特別じゃない」景色は、今までの、覚悟が要る、特殊な「パノラマカメラ」では決して残されることのなかった日常でもあります。THETAは、そういった記録を残すことのできる、初めてのカメラではないでしょうか。

30年後、いまの子供が大人になったとき。自分の子供時代を振り返ろうとしたとき、はたして今の形で保存されているデジタルデータがきちんとそのまま残り、再生できるか…は、確証が持てない、そんな気持ちが常にあります。

今回コンテストの受賞式で「MIROさんはデジタルばりばりの作品を応募すると思っていたのでとても意外だった」というようなことを複数のかたから言われたのですが、実はこの「デジタルデータが将来再生できるか」というテーマについては私自身かなり以前から取り組んでいまして、昔のゲーム機の「体験の保存」とか3D写真をアナログ保存したりとか、「その電子書籍、100年後に読めるの?」と問う作品を作ったりとかいろいろとトライはしています。

なので、今回はこの延長線上で「パノラマ写真のアナログ保存」をテーマにしてみた、というわけです。

 

「スライド投影」という実装について

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実装自体はシンプルに「秋月ドームプロジェクターにスライドを差し込めるよう改造し、瓶状・球状のスクリーンをつけたもの」です。投影という形で実装する前は、パノラマボールのような実装やこれを折りたためるようにしたもの…など、複数の形態を検討しました。が、写真を保存形態にすることに手間がかかっては仕方ない…というか、つくるのめんどくさかったら自分で使わなくなっちゃうので最終的にこの形(スライド投影)になりました。

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スライドは、THETA写真を魚眼プロジェクター向けに変換(正距円筒図法→極座標系・ドームマスター)したあと、フィルムレコーダーでポジフィルム(スライドフィルム)に焼き込んでいます。

 

ドームプロジェクターについて

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ベースとなった秋月ドームプロジェクターはこちら。もともと解像度の低い液晶パネルがついてきている、液晶プロジェクターです。今回は液晶パネルをひっぺがして、光学系(と高輝度LED)だけ使っています。

で、この秋月ドームプロジェクターにぴったりの球体スクリーンですが…

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IKEAのウォールランプ「レードショー」の…

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このLEDランプ!このガワがスクリーンにものすごくぴったりです!

5個連なって7499円。球体スクリーンだけを部品取りするとスクリーン1個1500円相当と、秋月プロジェクター(980円)と比べて割高感は否めませんが、あてはめてみると光学系のピントがぴったり合うサイズと材質で驚くと思います。ぜひおためしあれ。

(5個もまとめて買えないよ!という人は、いくつかまとめて買ってあるのでTwitterのDMででもご相談ください。手元に在庫があれば小分けします)

 

ジャム瓶について

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「ジャム瓶」というタイトルにもある投影対象は、実は「これくらい(プロジェクターのピントが合う範囲)の大きさで、なにか手頃な投影物体はないだろうか…」というところからの逆算で決まりました。とはいえ普通のジャム瓶をただプロジェクターに当てただけでは何も映らないので、じつはこれはこれでちゃんと(?)加工しています。

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DMM.make Akibaさんにあるサンドブラストマシン(砂を吹き付ける加工機)で…

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ひとつひとつ手作業でサンドブラスト加工し、透明なガラスに内側から曇りガラス化加工をしています。もちろん(?)この作業、ぜんぶ自分でやる必要があるんですが、初めてのサンドブラスト楽しみながらもなかなかきれいに加工するのは難しかったです、、、

そしてなにぶん加工してみないときれいに映るかどうかもよくわからないので、実はいろいろな種類の瓶を持ち込みまして、加工してみていちばんきれいに映ったものを応募したのでした。

 

というわけで…

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かんたんなアナログ工作ネタではありますが、ちょっとかわいい全天球写真の世界。デジタルから飛び出す、こんなのもたまにはいかがでしょうか。

実はこれ、材料さえそろえばまねして作るのもかなり簡単(加工自体はとても簡単)なので、そのうち具体的な工作手順も紹介できたらなと思います。ただ…写真をスライドフィルムに焼くところだけ、今も使えるどこかよい業者があればいいんですが。

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