2012/03/31 ■ 「携帯電話と心臓ペースメーカー」の「常識」が変わるのはいつか Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

2年前『「携帯電話が心臓ペースメーカーを誤動作させる」という話』というblogエントリを書きました。結局のところ有名な「携帯電話はペースメーカーから22cm以上離すべし」というガイドラインは、第2世代携帯電話の存在ありきで設定されたものだったわけですが、いよいよ本日、3月31日をもってNTTドコモが最後の第2世代携帯電話(mova)サービスを終了させます。そう、長らく設定されてきた「ペースメーカーから携帯電話を22cm以上離す」時代が終わろうとしているのです。
では今後この「常識」はどうなるのか?…総務省に聞いてみました。


総務省に電話して今後の方針についてたずねたところ、おおむね以下のような話が聞けました。

(3月29日時点で)「不要電波問題対策協議会のあたらしいガイドラインについては検討してはいると聞いているが決定したものはまだない」
「どのようなガイドラインになるのかはわからない」
「総務省ではホームページなどで本問題については告知しているし、関係機関に通知もするだろう。だが積極的な一般への広報ということは考えていない」

まあつまり状況は2年前から積極的に変えるつもりはなさそうでした。

しかし、この話をしている間、総務省のかたから「2Gでは最大影響距離が15cmだった(ので安全マージンを見込んで22cm離すというガイドラインが制定された)が、3Gでは8cm」「auで7月に停波がある」といったキーワードも出てきました。8cm?あれ、ほとんど密着した状態でのみ影響があるのでは…?

実は前回の記事では見落としていたのですが(ごめんなさい)、3Gの携帯電話でペースメーカーまで8cmまで近づくと影響がある機種が存在することは2005年の調査(平成17年電波の医用機器への影響に関する調査結果(総務省)で示されています。
(1) 携帯電話端末が植込み型医用機器へ及ぼす影響
ア CDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO(800MHz帯)携帯電話端末が植込み型医用機器へ及ぼす影響

(ア) 心臓ペースメーカについては、ペーシング機能への影響*2を生じる場合があることが確認されました。この影響は、携帯電話端末を遠ざければ正常に復する可逆的なもので、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離は8cmでした。

具体的な資料は「表Ⅰ-2-1 携帯電話端末による植込み型心臓ペースメーカへの影響(pdf,p23)」にありますが、見てみるとこの「8cm」は
auで採用されているCDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DOの800MHz帯
の機種だけで発生していることがわかります。


ところが、ここで言う「CDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DOの800MHz帯」は、いまの「auの3G端末で使われている一般的な800MHz帯」とは違うものです。

au、旧800MHz帯を用いる「CDMA 1X」を来年7月22日に終了
KDDIは2012年夏に予定されている周波数再編にともない、旧800MHz帯を用いている「CDMA 1X」および「CDMA 1X WIN」(au ICカード非対応機)のサービスを2012年7月22日をもって終了することを発表した。
(略)
auでは3Gのサービスに800MHz帯と2GHz帯を利用しているが、800MHz帯をメインにして、エリアを整備してきた経緯がある。この800MHz帯についても、CDMA 1X導入時から用いている「旧800MHz帯」と2006年以降に導入した「新800MHz帯」の2タイプが存在し、旧800MHz帯のサービスが今回終了となるわけだ。

先ほどの「8cmの影響があったCDMA2000 1X/CDMA2000 1xEV-DO 800MHz」は、調査自体が2005年ですから旧800MHz帯の機種にあたります。つまりこの「8cmで影響が出る機種」は本年7月以降使えなくなるはずです。
  • 本日(2012年3月31日)までは、「携帯電話がペースメーカーに影響をあたえる可能性がある距離」は「15cm」
  • 今年7月(2012年7月22日)までは、「携帯電話がペースメーカーに影響をあたえる可能性がある距離」は「8cm」
  • 今年7月(2012年7月23日)以降は、「携帯電話がペースメーカーに影響をあたえる可能性がある距離」は「3cm」
となるのかなと推測します。

ただし!
調査資料には具体的な機種が書いていないためこれが本当に正しいのかは今後さらに確認が必要です。(8cmの影響があった機種が本当に7月で使えなくなるのかどうか確認が必要)、どちらにしてもせっかく大きく状況が変わるのだからペースメーカー利用者の安心のためにも「新常識」は大きく広報してほしいなあ、と思います。
まあ、ひとまず次は7月23日を待つことにいたしましょう。