ところが、このKinoppyで一部の出版社の書籍を買おうとすると「本電子書籍の再ダウンロード期間は、ご購入から1年間です」と表示されることが話題になっています。「え!クラウドサービスなのに再ダウンロードに期限があるとかなんだよそれ!」…私もそう思っていたんですよ!
ところが、よくよく話を聞いてみると「Kinoppy」で言う「再ダウンロード期間」はあんまり気にしなくていい性質のものだということがわかりました。
まずKinoppyのシステムのおさらいから。KinoppyはAndroid・iOS・PCの間で「本棚」を「同期」することができる、クラウド型の電子書籍サービスです。つまり、
- 紀伊國屋BookWebで電子書籍を購入する
- →Kinoppy電子書籍リーダの「本棚」に電子書籍が登録される
- →この「本棚」は、登録している複数台の全端末で同じものが出てくる(つまり、PCで本を買うとPC版Kinoppyの「本棚」だけでなく自分のiOSやAndroid端末の「本棚」にも同じ書籍が自動的に登録される)
- →この「本棚」に登録されている本は、しおりなども自動的に同期されるため「自宅でPCを使って読んだ本の続きをiPadで読む」「iPadで読んだ本の続きを自宅のPCで読む」といった流れがとても自然にできる
- →その際「本棚」に登録されていて、かつデータがまだダウンロードされていない書籍はワンクリックで自動的にダウンロードされ続きを読める
- →つまり、本棚、書籍のデータ実体、しおり、読み進めた箇所などすべては「端末上にあるかサーバ上にあるか」を全く意識せず、同じアカウントにひもづけられた全ての端末でフラットに取り扱うことができる!
ところが。
Kinoppyで電子書籍を買おうとすると、次のような表示が出ることがあります。
「本電子書籍の再ダウンロード期間は、ご購入から1年間です」
\な、な、なんだってー!/
Ω Ω Ω
そして、先に説明した「本棚に登録されているがまだ端末にデータがない書籍」をダウンロードしようとする際にはこのような表示が出ます。
「再ダウンロード処理中です」
\な、な、なんだってー!/
Ω Ω Ω
つまりKinoppyは優れた「クラウド型電子書籍サービス」であるにもかかわらず(実際UI上は書籍データの実体が端末にあるかサーバにあるかすぐにはわからない構成になっていて、ほぼ意識せず使えるようになっています)サーバからの再ダウンロードに期間制限がある…つまり「見た目は変わりないのにいきなり本が読めなくなってしまうかもしれない」というわけ!?それはいくらなんでもおかしくないか!?
ちなみにこの「再ダウンロード期間」については、KinoppyのFAQによると
と、出版社の意向であることが示されています。
いやこれおかしいよね、と思っていたら本当に誤解で、そんな不便なサービスではありませんでした。(ここ重要)
KinoppyのUIは「本の実データは再ダウンロードで持ってくればいい」という観点で設計されている感があるので、余計「再ダウンロード不可」が重い。ファイルバックアップもしくは「クラウドバックアップ」的な機能で「再ダウン不可」を逃げる方策の実装を願います @Kinoppy_Dev
— MIROさん (@MobileHackerz) 3月 20, 2012
とTwitterでつぶやいてみたところ、こんな返信がありました。@mobilehackerz Kinoppyの本棚同期はクラウドバックアップ的な設計思想になっております。この点はストアからの再ダウンロードとは別物になりますのでご安心下さい。
— Kinoppy Dev-Teamさん (@Kinoppy_Dev) 3月 21, 2012
え!?
その後もTwitter上で、Kinoppyの開発チームの方(※非公式アカウントです)とやりとりさせていただいた結果わかったことは
Kinoppyでの「再ダウンロード期限」とは、ストアの「再ダウンロード」ボタンが表示される期限であって、書棚からダウンロードするものは「同期」だから期限を過ぎても可能
ということでした。電子書籍ストアで本を購入しようとした場合、
と「電子版を購入」というボタンが表示されます。一度購入した書籍は、このボタンが
のように「再ダウンロード」というボタンに変化するのですが、1年経つとこのボタンが表示されなくなる、とのことです。That's ALL.
別にストアからわざわざ再ダウンロードしなくとも、本棚に登録されていればそこから再ダウンロード(データの同期)はできます。それはあくまでも「購入した書籍を書棚から取り出す作業」にあたるので、再ダウンロード制限は受けない、という解釈のようです。うひょー、それなら別に不便はしない!
正直、これはKinoppy側の説明が足りない(そもそも「同期」の際に「再ダウンロード処理中」と表示されるのが混乱のもと)かなと思います。が、少なくとも「出版社側が制限をかけていても不便なく使えるようにちゃんと設計されている」ことはわかります。(ただ、この「本棚」というクラウド管理が使えないSony Readerの場合はまた話が変わってしまうようですが)
「Amazonを見習え」と言うのは簡単ですが、実は日本のサービスも使い勝手としては負けてない(負けないように工夫してちゃんと作られている)よ、というお話でした。
余談。そういう仕組みなので、Kinoppyの場合「(クラウド上の)本棚に登録されている」ことが生命線です。本棚に登録されていれば所持されているとみなされデータは自由に取り扱えます。
つまり、
「書籍の削除」メニューのうち
- 「ファイルのみ削除」は、データ容量がきびしくなった時に気軽に使え、ワンクリックでまたすぐ同期(再ダウンロード)できる行為
「本棚から削除」は書籍を捨てる行為に近い(再ダウンロード期限が切れた本の場合は再度買い直す必要がある。ただし、一部出版社以外の本は気軽に再ダウンロードはできる)
追記:
本棚から削除しても、設定→注文履歴からたどると該当書籍に「本棚へ追加」とのボタンがあり、そちらから復活可能(これは「本棚同期の機能」なので再ダウンロードではないw)とのこと。いろいろ手を尽くして消費者側に不利益がないように工夫されているのね…
追記2:
TwitterのKinoppy_Devさんは非公式アカウントです。この流れは非公式だから言えることがある、という文脈で出てきたものだと思っています。
→続きもあります:iPadで買えない電子書籍がある!なんじゃこら!…さて、悪いのは誰?