以前紹介した「立体ディスプレイ」Volumeですが、その後開発者のかたが来日したりなどありつつ、ついに我が家にプリオーダーぶんのVolume(Betaエディション)が届きましたヒャッハー!というわけで、開封+ファーストインプレッションをお届けします。
ひとまずおそらくみなさんが知りたい「で、正味立体ディスプレイとしてどうなの?」という面で言いますと「解像感や明るさ、層の分離感に原理上の課題は当然あるが、おそらく前回の記事の原理を見てみなさんが想像するであろう感覚よりもずっと“立体ディスプレイ”っぽく見え、充分に不思議な楽しさを感じられる仕上がり」というかんじ。なかなかよくできてます。
「Volume」が届いた!
届いた瞬間開口一番の台詞は
「でwwwwwかwwwwwいwwwwwww」
みなさん写真に写り込んでいるボールペンのサイズをごらんください。いやともかくケースがでかいそして重い!ケース自身も単体でキャリングケースになっており非常にがっしりしております。
ケースを開けるとほのかに香る塗料のにおい。「Volume」の筐体自体もいかにも板金加工っぽく見えますし、まだ大量生産に至らない手間のかかった試作機感、それも出来たてほやほやの新鮮な一品らしいたたずまい。キャリングケースへのお金のかかりかたも含め、Betaエディションならではのコストのかかりかたを感じさせます。(※あくまでもこれはベータ版であり、製品版はもっと簡素になるんではないかと思います。というか簡素にしないと採算合わないのでは)
で、取り出してみるとあまりにもズッシリと重量感があるので思わず重さを量ってしまいました。「Volume」筐体単独で14.2kg、キャリングケースと付属品も含めると…24kg!うわー、下手したら飛行機の受託手荷物で超過料金とられるやつだこれ!
というわけで、これをあちこち展示会などに持ち込んでデモで遊ぼう、と思っている人は少々覚悟が要りそうです。というかこんなの航空便で送ってくれたんだ送料かかっただろうなあ、という若干申し訳ないきもちも…。
とはいえ「(ケースが)でかい」「重い」というのはネガティブなわけではなく(収納する場所確保にはちょっと困りますが)筐体は非常にがっしりしっかりしており安心感があります。ともかく肉厚質実剛健!背が高いだけにしっかりとした重量がないと転倒の心配もありますからね。
同梱物
・「Volume」筐体
・ACアダプタ
・USBケーブル
・HDMIケーブル
・説明書(Quick Start Guide、Unity Reference Manual)
側面には電源スイッチ、オーディオ端子、HDMI端子、USB端子、電源端子と「VOLUME BETA EDITION」の刻印があります。
繋いで電源を入れてみる
PCに接続して電源を投入すると、「Volume」はフルHDの外部モニター+USB外部ドライブ(USBメモリ)として認識します。
USBドライブには、サンプルアプリケーション(Demo)と、各筐体ごとのキャリブレーションデータが入っています。まずは対応アプリで試してみよう…となるわけですが、2017年5月頭現在ではApp Libraryにある対応アプリはまだこのバージョン(ベータエディション)に対応しておらず、天地が逆になったりキャリブレーションデータを読まなかったりするので、最新のSDKを組み込んで自力でビルドするか筐体のUSBドライブに含まれているデモアプリを試しましょう。
その際、アプリケーションは「Volume」側ディスプレイにフルスクリーン表示で起動する必要があります。デスクトップと複製表示にして起動するか、フルスクリーン画面の出力先を切り替えたい場合はデモアプリを「シフトキーを押しながら」起動し(※Unityの機能)、画面設定ダイアログを表示し出力画面を選びます。
出ましたやっふー!
Volumeの「立体ディスプレイ」としての実力は?
Volumeは「多層(マルチレイヤー)」式の立体ディスプレイ(Volumetric Display)。立体物を複数の層に分割し、奥行きのある多数の層にそれぞれ映像を投影することで、全体として立体の映像を実現します。
またそれらの分割した層をぎゅっとまとめて一枚の画面におさめ、それを投影する形ですので原理上縦解像度が非常に荒くなることがわかります、また奥行き方向も層として分離していますので、連続性がなくどこまで「立体」として知覚できるのか、半信半疑というかたも多いでしょう。
…というわけで、実物の見た目はどんなかんじなのか。気になっていたわけですが…
どうでしょう。たしかに解像感はあまりないし層間分離もしているのですが、「おもったより立体ディスプレイっぽい!」という感じじゃないですかね?少なくとも私はそう思いました。
各層の透明度と輝度のバランス、層の厚さなどが絶妙なバランスを保っているのかな、と思います。
また、フロント側にはタッチパネル機能もあり、触れて操作したりキャラクターにタッチしたりすることができます。立体映像がするすると操作にあわせて動くのはなかなかの快感です。また、動画では音をあえて消していますが結構大音量を出せるスピーカーを内蔵しており、単体で音も含めて展示することもできるようになっています。
とはいえVolumeは立体ディスプレイ(Volumetric Display)と言いつつも「層ごとに分離した映像の集合」であることには違いないので、視認性含めコンテンツのつくりと見せ方にはそれなりの工夫と配慮が必要そう。ここは標準でLookingGlassFactory社が用意しているライブラリなどを眺めながら、試行錯誤をしていくことになりそうです。
アプリの開発は?
UnityのアセットストアにSDK(プラグイン)が(無料で)用意されており、またこのSDKがけっこう至れり尽くせりでよくできています。SDKをインポートするとUnityの3D空間で「どの部分を立体ディスプレイに表示するか」のエリアが選択できるようになり、その範囲が”Volume”で立体表示されます。簡単に言えば「それだけ」で開発できる。
どう見えるかはエディタ上でもプレビューできますし、ビルドしたアプリケーションも”Volume”を繋いでいないときは自動的にプレビュー表示モードになります。
「ちょっとミクさんを立体で踊らせてみたい」程度であれば既存のUnityプロジェクトにほぼ「SDKをインポートするだけ」で対応アプリケーションを作ることができそうです。(※当然よりよく見せるための見た目の調整・シェーダの調整などは個別に必要ですが)
ファーストインプレッションまとめ
「原理はシンプルで、その原理上の制約はあれどかなりよくまとまった立体ディスプレイ(Volumetric Display)」。
人目を引くサイネージとして使えるほどの大きさではありませんが、ちょっと未来っぽいコンテンツ提示システムとして、開発も含めてお手頃に遊べそうな感じです。
いまはベータバージョンのプリオーダーが終わり、別途Insider Access募集中という状況。プロトタイプが気になるかたは検討してみてはいかがでしょうか。