2016/06/26 ■ <解決編>絶対にWindowsストアでWindows 10 Home→Proへのアップグレードをしてはいけなかった話 Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

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大きな反響のあった「絶対にWindowsストアでWindows 10 Home→Proへのアップグレードをしてはいけない」という話。要するに、WindowsストアからWindows 10 Proへアップグレードした場合、ちょっとしたハードウェアの変更によりライセンスが無効とされてしまい、14000円が無くなってしまう…という、にわかには信じがたい出来事をまとめたものでした。

該当のblog記事にも随時追記してありますが、この件、その後マイクロソフトのサポートからは「ライセンスが無効となる、という案内は誤りだった」と認めていただきまして、さらにはWindows 10自体のアップデートで今後このような場合でもトラブルシューターで再アクティベートできるようになるそうで、完璧に解決となりました。もう、WindowsストアでProへのアップグレードをしても大丈夫です!

 

問題点の切り分け

該当のblog記事は、Windows 10マシンの起動ドライブを入れ替えた際、アップグレードしたはずのProライセンスが素直に認証されなかった(認証されなかったこと自体は想定内だった)ので、どうすればいいのかマイクロソフトのサポートに問い合わせたところ、「あなたのライセンスはライセンス自体が無効になる」と告げられた…ことから、いくらなんでもそれはおかしくないか?と、事細かくサポートに詳細を問い詰めながら、ひとつひとつ「本当にこういう見解でいいのか」と確認した上で書いたものでした。なので、あの時点ではあれが正しくマイクロソフトの公式見解、だったのです。

「Windowsのアップグレードが正しく認証されない」という現象は、

そもそもユーザとしてOSを取り扱う権利がどこまであるのか。PC自体を変更してもOSのライセンスを移し替えることができるのか、PCの変更はできないのか。変更ができない場合、どこまでの部品変更が「同一のPC」と認められるのか。…という、ユーザの「権利」がどこまで許されているのか、というライセンスの解釈、契約上の範囲はどこまでなのか

という「ユーザ権利の」視点と、

OSを使おうとしたときに、それがシステムに認められるか(アクティベーションできるか)。ユーザがOSを利用する権利があるとしても、システム上それがすんなりと認められない(アクティベートに失敗する)場合、再アクティベートする手段はあるか。その再アクティベートにどれくらいの手間がかかるか。

という「システム上の」視点があります。

いろいろ言われているWindows 10 アップグレードと、それに関するアクティベーションのごたごたを見ているとここが少しごっちゃになっている人がいる印象を受けます。アクティベーションが通らない、ということはユーザ権利がないことを意味しません。たとえめんどくさくとも、再アクティベートする手段があればいい。その手段が画面上に明示されていなくとも、OSを使用する権利をなんらかの形で認めてもらい、再アクティベートすることさえできれば最終的には自らの「OSを使う権利」という資産は守られます。逆に、その権利が認められなければ、資産が消失してしまう。この場合は大きな問題となります。

ただし、その再アクティベート手段が「サポートに電話し、長々と説明したあと日時を予約して遠隔サポートを受け、あらためてライセンスを再発行してもらう」といったくっそめんどくさい手順を踏む必要がある場合、これは「権利があるのにその行使に非常に手間と時間がかかる」という別の問題を持つこととなります。

 

ライセンス記述とサポート対応の矛盾

前回のblog記事は、後者の問題(再アクティベートがめんどうくさい)だと思っていたら前者の問題(私のアップグレードライセンス自体が無効)ですと言われ「!?」となった、という経緯を記したものです。

で、あまりにもこの回答が納得いかないものであったため、あらためて自分でもライセンス条項を読み込んでみたのですが…

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Windowsのライセンス「マイクロソフト ソフトウェアライセンス条項」には

お客様は、本ソフトウェアをスタンドアロン ソフトウェアとして取得した場合 (およびスタンドアロン ソフトウェアとして取得したソフトウェアからアップグレードした場合)、お客様が所有する他のデバイスに本ソフトウェアを移管することができます。

とあります(この「スタンドアロンソフトウェア」とは、リテールパッケージ版として販売されているWindowsのこと)。リテールパッケージ版から「アップグレード」した場合も、もとのリテールパッケージ版と同じくデバイス間の移管ができる権利がある、ようにしか読めません。デバイス間の移管ができるのであれば、ライセンス上はそもそも「どこまでが1台のPCか(どこまでの部品変更が契約上許されるのか)」という範囲に悩まされることすら必要ありません。

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WindowsストアでのProアップグレードの販売ページにも、最下部に「この新しいソフトウェアの使用は、元のWindowsオペレーティングシステムのライセンス契約に規定されます」とあります。

また、前回サポートに「これがライセンス無効となる根拠だ」と示された、Microsoftサービス規約には

8. ソフトウェア ライセンス   別途のマイクロソフト ライセンス契約が付属している場合 (たとえば、お客様が Windows の一部として含まれるマイクロソフトのアプリケーションを使用している場合、かかるソフトウェアには Windows ソフトウェア ライセンス条項が適用されます)

とあり、やはりどこを読んでも、どう考えてもWindowsのライセンスが優先するように読めるのです。

というわけで、あらためてマイクロソフトのサポートにこれらのライセンス条項を示し「ライセンス上は私のアップグレードが、ライセンス自体無効となるはずはない。これはサポートの対応がライセンスと矛盾しているのではないか」と指摘したところサポート側の対応の誤りであったことを認めていただいた、という次第です。

 

サポートの対応誤り

マイクロソフトのサポートに確認していただいたところ、サポートマニュアル(「社内資料」という言い方をされていましたが)上で「ストアでProアップグレードしたライセンスはパーツ変更によってライセンス自体が無効となる」という案内をするよう明記されていた、とのことで、サポート対応自体がこれまでずっと間違っていたことがわかりました。

つまり、前に挙げた「ユーザ権利の」視点、「システム上の」視点のほか、

ライセンス上はユーザにOSを使用する権利が引き続きあるはずだったが、サポートの対応マニュアルのミスによりサポート対応として権利を認めていなかった

という「サポート対応の」問題があった、ということです。

このサポート対応を受けてあきらめてライセンスを買い直してしまった人もいる気がするのですが、そういった過去誤ったサポート対応を受けて損害を受けた人がいるかどうか、そしていたとしてそうした人にどう対応するか、といったようなことは、テクニカルサポートの窓口から一介のユーザである私へは伝えることができないとのことでした。

なお、この際あらためて確認しましたが、「パーツ変更でアクティベーションが素直に通らなかった場合、ライセンス自体(権利自体)が無効となる」という(誤った)アナウンスをしていたのは、今回該当のWindowsストアからのProアップグレードの場合のみで、以前話題になっていたWindows 7などからの10アップグレード時の再認証トラブル時は基本問い合わせに対してはライセンスを認め再アクティベートしていたとのことです。

 

問題の解決

というわけで、今回のアップグレード問題を3つの視点で整理した場合

「ユーザ権利の」視点:

ライセンス上、ストアからのアップグレードでは元となったWindowsと同じ権利を持つことが確認された。つまりベースとなったWindowsがリテールパッケージ版であれば、ストアでProへアップグレードした場合、そのProライセンスもリテールパッケージ版と同等のユーザ権利を得る。これは今回問題となった「アップグレード部分の権利が著しく制限される」といったものではないため、解決しました

「システム上の」視点:

部品の変更によってアクティベーションが通らず、Proアップグレードの再認証を得るために非常に面倒な手続きが必要になっていたかもしれなかったが、Windows 10 Anniversary UpdateでデジタルライセンスがMicrosoftアカウントと紐付けられ、トラブルシューターから再アクティベート可能になるとのこと。つまり、システムとして再アクティベートの手段が整備され簡単になるとのことで、解決しました(解決予定)。なお、「MSアカウントとの紐付け」についてはもともとHome→Proアップグレード購入時にMSアカウントが必要なので特別に追加で何かが必要になるわけではない、はず。

「サポート対応の」視点:

サポート対応マニュアルが誤っておりユーザに「ライセンスが無効になる」と案内していたことについては、誤りを認めていただき、対応をすでに修正したと連絡いただいております。つまり、解決しました

…というわけで、すべての視点において問題が解決したため、「WindowsストアでWindows 10 Home→Proへのアップグレードをしてはいけない」としていた根拠は無事なくなりました。(いや、あえて言うならば「高い」という要素はあるのですが、、、)

自分も結構振り回されたこの一件。サポート対応マニュアル自体が誤っていた、というのはなかなか予想外の展開でしたが、いちばんベストな着地点に収まってよかったなと、、、

(あ、ちゃんと書いてませんでしたが私自身のProアップグレードもちゃんとWindows 10 Proのライセンスキーを発行していただき無事復活しております)