2017/04/22 ■ マストドン(Mastodon)の面白さを維持するために絶対必要なただひとつの機能 Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

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MobileHackerzのマストドン(Mastodon)はこちらです

ネットの一部で話題を席巻している新SNS「マストドン(Mastodon)」。前回は「おひとりさまインスタンス」として1人で使うサーバの構築を紹介しましたが、その後ドワンゴが「friends.nico」というインスタンスを立ち上げたり、ラジオのニッポン放送が独自のインスタンスを立ち上げたりと、止まらず状況は変化しつづけています。

で。

この「マストドン」、「Twitterのようなサービスで、Twitterと違って分散型」と言われても「は???それの何が面白いの???」という人が多いんでないかと思います。実際、自分で始めてみるまでは批判しまくっていたのにやってみたらころりと意見が変わった人もいるくらいです(笑)

いったい何が面白いのか。

そして、その「面白さ」を今後も維持していくために、必要な機能がいまのマストドンには足りていない。その機能とはなんなのか。

マストドン(Mastodon)の面白さとは

「カオス」だったり「いつのまにかTwitterでは失われていた自由さ・気楽さ」だったり。

マストドンに触れて「おもしろい!!」と言う人が挙げる「おもしろさ」は切り口が人によって異なります。しかし、みんなの話を聞いているとだいたい皆が言う「おもしろさ」はいくつかの要素に収れんすることがわかります。

①・「分散型SNS」というシステム・アーキテクチャ自体への興味
②・「人がまだそう多くない・そのためつまらない人がいない・または自分のプレッシャーになる人がいない」(アーリーアダプターのみしかいない)こと自体が産み出す場のおもしろさ
③・「ローカルタイムライン(フォロー関係に依存せず、そのサーバの人全員の発言を集めたタイムライン)」のカオス感・お祭り感
④・「ローカルタイムライン」がサーバごとに傾向が異なり、同じ趣味の人が集まっているという安心感

前回の「おひとりさまインスタンス」記事では主に①のおもしろさを指摘しましたが、これはあくまでもテクノロジー・ギーク視点であり、実際には②~④の面白さに引きつけられている人が多いようです。

そして、この②~④のおもしろさを産み出す鍵になっているのが「インスタンスという形でコミュニティが(比較的)小さな単位に分離されている」ことと、「そのインスタンスごとのローカルタイムラインが存在する」というマストドンならではの(Twitterにはない)特性に基づいています。だから、「マストドンが」おもしろい。

実際、マストドンは今のところTwitterとはだいぶ違った使われ方をされています。

Twitterでは登録・ログインするとまっさらなタイムラインからはじまり、「まず自分の興味のある人をフォローし自分のタイムラインをつくる」のですが、マストドンでは「あるインスタンスに登録・ログインすると、目の前にすでにいっぱいいろんな人が喋っているタイムライン(ローカルタイムライン)がある」のです。なので、リプライで会話に入っていく…のではなく、マストドンでは「誰ともなく雑談に入っていく」(特定の人のリプライではない「空中リプライ」でローカルタイムラインに発言を流し、それを見た誰かからの反応を待つ)ような会話の仕方がよくされます。

このローカルタイムラインも現時点でサーバによってだいぶ発言の特性が異なっており、まさしく「自分の好きな場所を選んで参加する」ような状況になっています。また、各インスタンス(サーバ)によって独自の機能や装飾を実装していき差別化・独自路線化を突き進むという流れも一部でおきており、おそらく触れてない人が考えるよりずっと「サーバによってコミュニティの色が違う」のが現状なのです。

 

この「面白さ」の弱点は

これは、繰り返しになりますが「インスタンスという形でコミュニティが(比較的)小さな単位に分離されている」からこそ成立する仕組みです。

そう、つまりこの「面白さ」はこのままではスケールしません。コミュニティが大きくなるにつれ、②も③も④も「面白さ」が機能しなくなっていってしまいます。

では、マストドンの面白さは期間限定なのか?「コミュニティの一生」のように、人が増えたら自然につまらなくなって「オワコン」化するのか?

いやいやいや。マストドンは「分散型」SNSです。コミュニティ(サーバ)が大きくなって機能しなくなったら、別に小さいコミュニティを作ればいい。もしくは、小さい、もっと趣味のあう、別のコミュニティに移動すればいい。それでも「SNS空間としては繋がっている」!それが「分散型SNS」マストドンの本領だと、私は思います。(なお、理念としては分散はあくまでもFederationのためであって、このように「内々のコミュニケーションに閉じる」ことは本来あるべき理念を真っ向から否定するものだ、という意見もありますが、マストドンでは「ローカルタイムライン」が目立つ位置にある以上ローカルのコミュニケーションが促進される実装になっており、そのような実装になっている以上はローカルのコミュニケーションを中心に楽しむ人が増えるのは必然だと思っています)

いまも、複数のインスタンスにアカウントを持っている人は多いと思います。Pawooで絵師のタイムラインに埋もれていたい、いっぽう、friends.nicoでニコ厨のおっさんトークにまみれていたい。

いまは複数のインスタンスにそれぞれ別のペルソナ(アカウント)を持つことが前提ですが、これを「ペルソナ(アカウント)を維持したままで」他のインスタンスに移動したくなるときが、きっときます。そして、それが今はできない。これが現在マストドンが抱える最大の弱点だと思います。

 

弱点を克服するために必要な機能

というわけで、必要な機能はシンプルに「アカウントの引っ越し」です。ぱっと考えると何かのアカウント(たとえばTwitter)への紐付けや、一カ所の中央サーバでアカウントの同一性を担保する…というような仕組みが考えられますが、さすがにそれは分散SNSの理念に反しまくりでしょう。

現在のマストドンでも「フォロー」のエクスポート・インポートはできます。が、「フォロワー」の移行はできないし、投稿したトゥートの移行もできません。

この状況は「一度使い始めたメインアカウントをその場に固定せねばならなくなる」圧力になります。そしてその圧力は、時間が経ちソーシャルグラフが育てば育つほど強くなります。さらに「時間が経った」コミュニティは必然的に「コミュニティの一生」に従い面白くなくなるわけで…。これでは「結局、つまらなくなってしまった」という結末はすぐそこです。

でも、「引っ越し」ができれば、別の、もっと小規模なコミュニティにも引っ越せる。引っ越し後戻ってこられるなら、今期はあのアニメが気に入ったから、しばらくあそこを拠点にするか…みたいな運用もできるようになるでしょう。

もちろん!この機能については、既に開発者同士で議論がされています。はたしてどうなるでしょうか。

そういう意味でも、マストドンは今後が楽しみで、「発展を一緒に楽しめる」SNSです。たのしいですよ!

 

(なおGoogle+のサークル?というツッコミは聞かないことにします)

 

追記:
それにしても、このローカルタイムラインでのコミュニケーションの距離感は何かあたらしいな、という感覚がある。あたらしいサーバのローカルタイムラインって、既存のコミュニティのフォーラムにはじめましてって参加するほどはハードルが高くない(自分の誰宛でもどこ宛でもないトゥートが「勝手に」反映されるだけなので、発言のハードルがとても低い)自分でコミュニティをつくる労苦もなく既存のコミュニティの流れにするっと入れる距離感で、それがうまく作用しているのかなあ…。