2011/08/16 ■ 青春のFM音源サウンドを再現…ではなくリアルにプレイバック!多連装音源システムG.I.M.I.C (GIMIC) Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

「FM音源」「OPM」「OPN」といった言葉にピクリと反応する人、いらっしゃいませ。よくわからない人、そのままお帰りいただいて結構です。てへ。
FM音源とは1980年代に非常に幅広く使われたシンセサイザー音源です。シンセサイザーの音として楽曲に多く使われましたが、むしろ「(当時の)パソコンやゲームの音」として認識されていることが多いと思います。FM音源の独特の音色は、それまで無機質で単調な音しか出せなかったパソコン・ゲームのサウンドに大きな変革をもたらしました。そう、80年代のテクノロジーを取り巻く世界では実に原体験と言っていい“音”が「FM音源」なのです。ちなみにその後も携帯電話の着メロ音源としてずっと生き残っていますので、知らない人でも聞くと「ああ、この音色か」とピンとくると思います。

まあ要するに今30代以降で昔からパソコンやゲームにハマってきた人なら誰もが通過儀礼としてFM音源サウンドにどっぷり漬かってきた経験があるわけで、誰しもが何らかの思い入れがあったりするんじゃないかなーと思います。言いすぎですかね。

当時のFM音源には大きくわけて
  • 「OPN」(PC-8801mkSR, FM-77AVなど当時の8bitホビーパソコンに定番的に使われていたモデル)
  • 「OPM」(X68000などに使われていた比較的高級なモデル。アーケードゲームにもよく使われていた)
  • 「OPL」(セガマスターシステムなどに使われていた多音同時再生可能なモデル)
といった“派閥”がありました。それぞれ微妙に出せる音の性質が違うのですが、みなさんはどのモデルに思い入れがありますか?私はFM-7/77AVで結構OPNを使いましたが、やはり原体験としてはアーケードゲームのサウンドでありOPMだったりします。X68000(OPM搭載)にも思い入れたっぷりですし。

で。
そのOPMを搭載し、SDカードから曲データを読み込み再生してくれる現代の同人ハードがあると聞いて、次の瞬間キャッシュカードを握りしめATMに走ってしまったわけですよ。なんというか、不可抗力ってやつです。

その名も多連装音源システムG.I.M.I.C (GIMIC)」。もともと複数音源を同時に実装することができるシステムを指向しているようですが、今は同時に1音源を搭載可能な「マザーボード」と、それに搭載する「音源モジュール」を2種類(OPM,OPN3-L)製作されています。実のところこんなハードウェアなど無くともOPMの音は今はほぼソフトウェアでエミュレートできており、フリーで公開されているソフトウェアだけでほとんど当時そのままのサウンドがPC(やAndroid!)で再生できたりするのですが…それはそれやっぱり本当に本当に当時そのままの音源チップから生で出る音がいいんですよ!これがロマンなんですよ!生音ですよ生音!そこにロマンがあるわけですよ!

GIMICのコントロール基板(マザーボード)そのものは以前Interface誌に付録としてついていたNXP ARM基板(たぶん)をベースとして、そこからバスを引っ張ってきて各音源モジュールに繋いでいる形となっています。もとより音源システムを目指しているだけにアナログ周り(音声周り)はかなり気を使って配線されているようで、当時のX68000などより低ノイズと言っていいでしょう。

そしてOPMモジュールの音源は当時の、四半世紀前のOPM音源チップ「YM2151」そのものが新品で使われています。すげえ!どこにあったんだそんな在庫!と叫びたくなりますが、聞くと本当にわずかな流通在庫を各所からかき集めてきたそうです。
つまり制御部こそ現代のチップを使い現代のシステムとして作られていますが、音を生成している音源チップは100% PURE 当時!これでアツくならない30代はいないんじゃないでしょうか。

GIMICは音源を選択可能となっているので、「マザーボード」と「音源」を分けて購入します。私は「マザーボード」「OPMモジュール」そして「バックパネル」(=必須ではない)を買わせていただきました。マザーボードと音源を接続し、適当なSDカードにMDXデータ(X68000で幅広く使われていた曲データ)をコピーした上でマザーボードに挿入、電源を入れてボタンをポチっとするだけで(ヘッドホン端子より)音が鳴り始めます。(※私はどうもファームウェアがうまく動作しなかったようで、GIMICサイトからファームウェアをダウンロードし書き込みなおすことで正常に動作するようになりました)
X68000のデータ(MDXデータ)を完全に再現するにはまだPCM音源(ADPCM)が足りないのですが、これはただいまハードウェア開発中とのことですのでしばらくはPCM無しのサウンドを楽しむことにしましょう。

欲しいと思いました?でもこれ、同人ハードウェアなので入手可能な手段は限られます。私は先日開催された「オリゲー・フェスタ☆68 2011 夏のオフ会」というイベントで頒布を受けましたが、気になる方はG.I.M.I.Cの告知を定期的にチェックするといいでしょう。あとはロマンと当時の思い出にいくら出せるかという話じゃないかとおもいます。それと、個人製作の同人ハードウェアなので「製品」ではないことはきちんとご理解を。

このGIMICでどんな音がなるのか、何ができるのかは作られている方がアップロードしている動画を見るとわかりやすいでしょう。

ね?いいでしょ生音。ロマンですよねえ。

FM音源の奏でる懐かしいサウンドを聞きながらLEDに照らされるYM2151の姿を見ていると、この黒いICがなんだかとてもかわいく見えてくるのが不思議です。