2010/11/21 ■ Make: Tokyo Meeting 06>電子書籍の本質的な課題を提示する「Alice in BARCODE」 Xでつぶやくこのエントリーをブックマークに追加このエントリーを含むはてなブックマーク

11月20日・21日と大岡山の東京工業大学キャンパスで行われている「Make: Tokyo Meeting 06」というイベントに参加しています。 場所はNKH ニコ生企画放送局「ぼくのかんがえた電子書籍展」。NKHメンバーそれぞれ「理想の電子書籍」を考え、作って持ち寄ったテーマ展示となっています。
そんななか私の作品はこれ「Alice in BARCODE」。実は今朝(11月20日朝)現物が完成したばかりの出来立てのほやほやな作品なのですが、初日の展示ではなかなかご好評をいただいたようでほっとしています。


MTM04MTM05と続けて大規模なインスタレーションが続きましたし電子工作な作品多い私ですが、今回の作品は意表をついて印刷物です。見た目は普通に装丁された1冊の本…なのですが…

本文はすべてバーコード!
これCODE128という広く使われている形式のバーコードですので、市販のバーコードスキャナや一部の携帯電話でスキャンするとこのまま読めます。やっぱデジタル化は世の流れですからね!デジタル化は重要ですよ重要!これからは電子書籍ですよ電子書籍!

1単語1バーコードとなっているので本文を読み進めるためにはバーコードスキャナでピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッとひたすらスキャンしていく必要がありますが、いやあデジタルって便利ですよね!(※本文だけで28000個ほどのバーコードがあります)





と、一発ネタ出落ち系ではあるのですが、これをつくったのにはそれなりの意図があります。舞台裏を解説するのも野暮っちゃ野暮なのですが(で、個人的にはこれの現物を見てあまりにもの見た目の馬鹿馬鹿しさにウケていただければそれだけで本望極まりないのですが)少し解説をば。

いま、電子書籍元年!と言って電子書籍化への道が花盛りです。私も個人的にKindleを使っていますし、なにげにシグマブック向けの自炊ツールなんてのも作ったことがあるくらいには電子書籍大好きです。
でも、電子化はいいことばかりではありません。見落とされがちな問題なのですが、デジタルデータは意外と長持ちしないのです。

世の中のあらゆる情報がデジタルの世界に押し込められるようになってからまだたかだか2~30年ほど。そしてそのデジタルデータを記録するためのフォーマット、記憶しておく入れ物たる記録メディアなどは常に進化しつづけており、少しでも気を抜くとちょっと以前のメディアを読み出すことが難しいなんて事態に直面したりすることも珍しくありません
いま、8インチフロッピーに記録されたデータを読み出そうと思ったらどうする?
8インチならまだ「現在この瞬間は」ドライブがあるかもしれませんが、これがJazzだったら?SyQuestだったら?2TDだったら?3インチフロッピーだったら?

つい先日私もSCSIインタフェースを探して右往左往しましたが、実はこれってそれほど縁遠い話ではなく、誰もが一度は直面する課題になるはず。
デジタルデータに関しては、こういったメディアの問題だけでなく、記録フォーマットや再生デバイスなどについても同じ課題があるわけです。つまりひとことで言うと「それって100年後も読めますか?」

もちろんePubも含めて近年の標準フォーマットがそういう課題について充分認識していて、可読性・標準化を考慮して設計されているのもよく知っています。が、本当に100年後に読み出せるの?と聞かれるとやっぱり確信は持てませんよね。

「電子書籍電子書籍といいながら書籍をデジタル化するのはいいけど、書籍って100年200年を越えていく文化だよね」

「100年後も読めるメディアってなんだろう?」

「やっぱ紙かな」

というわけで、永続性というテーマにおいての電子書籍への皮肉として作ったのがこの「全編デジタル化された(バーコードの)紙の本」なのでした。

実はここしばらく私自身のテーマとして、この「永続性」を気にすることが多くなっています。たとえば過去のゲームを延命させるために機械的にもう持たなそうなLDプレイヤーの代替機を作ってみたり、3D流行中の今、子供の3D写真を30年後に残すためにアナログな手段を採用してみたり()。
まああれです。デジタル野郎も行き着くところまで行ってしまうと、アナログな手段もなんだか気になってくるんですよねー、というお話でした。