今(3月29日現在)は東京の水もまた安全な状態に戻っていますし今のところ再び放射能値が上昇しそうな傾向も見られません。というかそもそも最初の水汚染の報からして値を冷静に計算してみると別にリスクらしいリスクもない数字です。なので、「安定的に安全な水」は水道水できちんと確保できています。つまり今さら特にあせったり対策に走る必要は全くないのですが…
そこはそれ。生来のガジェット好きとしては一度「どうすればいいんだ!」と走り出したらもう本来の目的はどうでもいい!既に自分の中でこの問題は「どうやって子供のために安全な水を確保するか」から「安全な水を安定的に確保するガジェットを買うチャンス」になっています。子供のため、という大義名分を振りかざし、今日もAmazonでポチるのでした。ええ、ええありましたよいいものがAmazonに!
今回、水道水に混入したことで話題になった放射性ヨウ素。当初「ヨウ素は揮発性なので煮沸である程度飛ばせる」という説が東大病院放射線医療チーム(@team_nakagawa)のTwitterアカウントにより語られましたが、これは間違いで逆に「放射性ヨウ素が含まれた水を煮沸すると、逆にヨウ素濃度が高くなる」ことが実験でも明らかになり訂正・発表されました。
また同時にヨウ素は市販の浄水器ではあまり効果的に除去はできないだろう、ということも指摘されています。実際には浄水器メーカーによっては「多少の効果がある」などとうたっているものもあるのですが、不安が残るのもまた事実。
しかし…
しかし、ここまでの間に「安全な水を得るための方法」についての大きなヒントが出てきています。理科の実験をなんとなく覚えている人の中にはすぐにピンときた人も多かったようで、東大病院放射線医療チームの訂正ツイート(ヨウ素は煮沸でより濃くなることがわかった)にもTwitter上でもものすごい勢いでものすごい人数から同じツッコミがされていました。
煮沸で濃くなるんだったら、蒸留が効果あるってことじゃないの?
「蒸留」みなさん覚えているでしょうか。水などを沸騰させ、飛んだ蒸気を集めて冷やし、沸点の低い物質だけを収集する手法です。そう、煮沸でヨウ素の濃度が濃くなる…ってことは、飛んでいった蒸気にはヨウ素が含まれていない(ないしは薄い)ってことなんですよ。そっちのほうを回収すれば安全な水がゲットできるはず。ビバ蒸留!
しかし蒸留は手元の道具でやろうとすると結構手間もかかるし時間もかかります。水を火にかけっぱなしにするので人の監視も必要です。毎日「安定して」安全な水を得る手法としてはちょっとハードルが高い。
…と思いながらぽちぽちとAmazonをたゆたっていたら、なんと家庭用の蒸留水生成専用機があるではないですか!そりゃあもう見た次の瞬間高速にポチってしまうわけですよ。イエス、不可抗力。
前置きが長くなりましたが、これがその「家庭用蒸留水器」メガホーム社「水瓶座の雫」です。はっきり言ってかなりゴツい。
ポットの中には別のガラス容器が入っていまして、開封するとこんな感じ。蒸留水器のほかには活性炭フィルター(無くてももちろん蒸留は可能です)や洗浄用のクエン酸なども入っています。活性炭フィルターは25日に1度2パック交換推奨で6パック付属、クエン酸は…なんかしばらく使いきれなさそうな量入ってますね。当分困ることはなさそうです。
今回私はガラス容器バージョンを購入しましたが、ガラス容器へ取っ手を取り付ける作業はユーザ自身で行う必要がありました。その作業にプラスドライバーが必要なので注意。なんかこう、そういったところも実に大雑把というか、日本の細やかな家電製品に慣れているといろいろとカルチャーショックを感じる質実剛健なつくりになっています。(この商品は台湾製。台湾は今回の震災でものすごい日本を応援してくれているので、こういったところで台湾製品を買うのもいいものだ!…と、いうことにしておいてください)
これでワンセットです。金属製のポットに水を入れ電源を投入すると、蒸留が行われ口の部分から滴が垂れてきます。それを横に置いたガラス(ないしプラスチック)のボトルで受ける、という形です。見た目コーヒーメーカー的なものに見えなくも無いですが、一度に処理できるのは4リットル、それが金属製ポットとガラス容器両方に入る(4リットルが金属製ポットからガラス容器に移動する)わけですから、全体的なスケールが一味違います。
…というわけで一般的なコーヒーメーカーと並べてみましたが、その巨大さがなんとなくわかりますでしょうか。もともと本体がでかい上に作りがなにかと大雑把で、はっきり言って取り扱いにはそれなりの割り切りというか諦めというか慣れというかが要るかんじです。(※ボロクソ言ってるように見えますが、ばっちり機能はしますのでご安心を!単になんだかんだといろいろゴツい、という話)
では実際に蒸留してみます。本体を設置し(その際コンセントを入れるといきなり電源が入り加熱しだすので注意。後述しますがある程度加熱すると電源は自動的に切れはしますが、最初の設置時は気をつけてください)蓋を取り外します。この蓋の部分も結構重くてかさばる上に電気ポットのようにかぱっと開けられるわけではないのでちょっと慣れが必要です。まあそういうもんだと思いましょう。
そして水を注ぎます。一度に処理できるのは4リットル。ロス分も入れて3.6リットルくらいの蒸留水が作れます。一日一度精製すれば調理用などもある程度まかなえそうです。なおこのとき水ではなく最初からお湯を注ぐと蒸留の時間が短縮できます。
そして蓋(先述したとおりゴツくて結構重い)を閉め、電源をさし込みスイッチON!
ヒーターが入り、ファンが回り始めますのであとはただひたすら放置するだけ!やはりここは専用機。セットして放置するだけで蒸留水がどんどんできるわけです。
しばらく加熱し内部で水が沸騰してくるとチョロチョロと少しずつ水が出てきます。4リットル全部完了するのに約6時間。この時ずっと蒸留水器はファンが回りっぱなしでそれなりの音がします。ふぉーーーん、という全開ファンの音が6時間鳴り続けますので設置場所(キッチン)と寝室が同室だったり近かったりする場合は結構気になるかもしれません。音の大きさや雰囲気は「炊飯器が全力で炊いてる時の音」に近いですが、炊飯器と違って(熱は出ますが)水蒸気はほとんど出ません。その水蒸気を回収して水にしているのですから当然といえば当然ですが。
6時間ほど経ち投入した水がすべて蒸留完了すると、自動的に電源が切れます。なので自力蒸留と違って「セットしたらほっておくだけでいい」のが最大のメリットです。これなら日常的に蒸留水が使える!
もちろん結構な電力を結構な時間連続して使うので、特にこのご時世ですから深夜電力の時間帯に(余剰電力を)使うようにしましょう。精製時間も6時間とちょうどいいので夜寝る前にセットして朝1日分の水ができてる、という感じで使うといいのではないでしょうか。ちなみに消費電力は580W、それが6時間ですので電気代は1回76円くらいになるはずです。
蒸留が終わると(一度浄水器を通した水ですら)結構ポット側に白っぽい沈殿物が残りました。おそらく析出した炭酸カルシウムかと思われますが、まさしく蒸留が成功している証と言えるでしょう。
水そのものは「甘くておいしい」という評価が多いようです。私も意外とおいしいじゃん、と思いました。「意外と」…といまいち歯切れが悪いのは、もともと蒸留水はあんまりおいしいものではない…というのが理系の定説(笑)でその先入観がどうしてもあるからで他意はありません。おそらく付属の活性炭フィルターも効いているのかもしれません、非常に飲みやすい水でした。まあ、なんにせよ不純物の無い水が簡単に作れる!…というのはすごいことだと思います。
…というわけで「安心できる水を安定して入手する方法はないかな?」から「家庭用蒸留水器」にたどりつきました。
この機械、蒸留というステップを踏みますのでそこらの浄水器とはレベルの違う純粋な水がゲットできます。いろんなことに心配するのが面倒になってきた人は試してみるのもいいんじゃないでしょうか。
<最後に>
この蒸留水器、おそらく水に溶け込んだ放射性ヨウ素はほぼ取り除くことができるはずです(測定したわけではありませんがおそらく間違いない)が、その用途に使うためにはひとつ弱点があります。
それは「蒸留が終了するための条件」。蒸留が完了すると自動的に電源が切れますが、その「蒸留が完了した」ということを検知するために、この蒸留水器は「水がなくなりヒーターが過熱した際のサーモスタットで電源を切る」という手法を採用しています。つまり、水が完全に無くなって100度以上に釜が加熱するまで電源が切れないということです。
ヨウ素の沸点は184.25℃。そこまで温度が上がるかどうかもわかりませんし、ヨウ素がどういう状態で溶け込んでいて、どう析出されていくのかわからないのではっきりとはいえません。が、完全に蒸留が完了する際にヨウ素も蒸気として飛んでしまう可能性があります。なるべく確実にヨウ素を分離したければ、自動的に電源が切れる前に(まだポットに水が残っているうちに)蒸留を止めてしまい、ポット側の残水は捨ててしまいましょう。気になる場合は一定時間で電源を切ることのできるコンセントタイマーなどを併用すると楽だと思います。
全体的にちょっと歯切れの悪いレビューになってしまいましたが「純粋な水をいつでも入手できるようになりたい!」という不安感をお持ちの方にはベストな選択肢だと思います!時間がかかるのと電気を使うのが難点ですが、それは運用でカバー可能、全体的な作りの大雑把さはそれはそれで味だと思えば何の問題もありません(笑)